スペインの貴族ベルモンテは婚約者コンスタンツェを探している。コンスタンツェは海賊の手に落ち、トルコの太守セリムに売られたのだった。ベルモンテの召使ペドリロもセリムに拘束されている。ベルモンテはペドリロと再会し、コンスタンツェを誘拐することを画策する。
第二幕ではセリムがコンスタンツェと登場する。コンスタンツェはセリムの求愛を拒む。ペドリロの勧めによって、セリムはベルモンテをイタリアの建築家として雇う。ある晩、ベルモンテはコンスタンツェを連れ出すことに成功するが、セリムの家来に捕まってしまう。セリムはベルモンテが仇敵の息子であると知り、死刑を命令しようとする。しかし、セリムは二人の悲嘆を聞いて改心し、全員を釈放する。
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ハッピーエンドに終わる分かり易い筋書きである。ビデオブースに移動して早速オペラを見る。指揮者ゲオルク・ショルティが登場して序曲を演奏し始める。モーツァルト独特の軽快で流麗な音楽だ。シンバルとトライアングルがトルコの雰囲気を醸し出す。こうして散歩の度に図書館を訪ね、二時間余りのオペラ全編を何度か見た。コンスタンツェの召使ブロンデを演じているソプラノ歌手、リリアン・ワトソンの歌がすばらしく、絶世の美人で、いっぺんにファンになってしまった。
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図書館にはCDもあったので借りてきてラジオレコーダーに録音し、家でも時々きくようになった。次第次第に音楽が耳に馴染んでくる。
「なにかいい演奏会ないかしら?」
二月中旬、ある日の夕食時、妻が何枚かの演奏会ちらしを差し出した。横浜そごうに買い物に行ったとき貰ってきたという。芋焼酎のお湯割りを飲みながら一枚ずつ眺めてみる。最後のちらしを見て、目を見張った。
「錦織健プロデュース・オペラ W・A・モーツァルト 後宮からの逃走」
その場で二階のパソコンの前に行き、インターネットで予約した。
3月7日、午後2時半。曇り空でとても寒い。横浜港・山下公園の隣で神奈川県民ホールは広いアプローチ階段の行き着く先に堂々と聳えている。
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